塾をやっているととても気になることの一つに、「英会話をやっていた子の英語力の低さ」というのがあります。
大手チェーンなどの英会話教室に通っていれば、英語が得意になっても良さそうなものですが、傾向としてほとんどできない子がかなりの割合で見られます。
同業者の方からも当事者である保護者さんからもよく聞く話なので、私だけの思い込みではないはずです。
言語なので会話を通して習得するというのは理にかなっているように思えます。
英語に親しむためにダンスや歌を取り入れて楽しく通えるようにするのもいいですし、ハロウィンやクリスマスのパーティーもやればいいでしょう。
英語ができるようにさえしてくれれば、です。
今回この問題について考えてみたことで、方法論と実際の運用がかみ合っていないのではないかということに気が付きました。
会話を通して言語を習得するというのは、理想的な方法のように思えます。
どこの国の人も自身の母語はそのようにしておぼえているのですから、それがいちばん良い方法であるか、赤ん坊にとってはそれ以外の方法がないかのどちらかでしょう。
母語を本格的におぼえ始めるのは2歳ぐらいからだと言われています。
そこから3年たって5歳にもなれば、なかなか一丁前の口を利くようになりますので、ひとまずこのレベルを目指すとしてどのぐらいの時間を掛ければよいのか考えてみます。
日本のデータなのですが、親子の会話は週に平均で20時間弱という統計がありました。アメリカ人はもっと多いかもしれませんが、とりあえずこの時間を「親子の会話の時間」と考えます。
英語圏の子どもが母語としての英語を習得する過程で、このほかに友達や兄弟姉妹との会話、テレビや動画サイトで英語を聴く時間、本を読むことで英語に触れる時間もありますので、英語に触れる時間が週に30時間ぐらいあるとします。1年は約52週なので、年間では30×52=1,560時間を会話などに使っているとしましょう。
一方英会話教室は週に1時間で年間に45回ほどですので、こちらは年に約45時間となります。
1,560÷45=34.66666…となりますので、およそ35倍ほど、かける時間が違うということです。母語の習得期間と同等の効果を期待するならば、1年分の経験のために35年間教室に通わなくてはなりません。
2歳から5歳までの3年間分を英会話教室で賄うためには、100年は必要という計算です。
もちろんこれはアバウトにアバウトをかけたような数値ですので、そこまで正確ではないと思います。
ですが、問題の本質はとらえているはずです。
かける時間と方法がまったく噛み合っていないということです。
時間を増やすか方法を見直すか、どちらかしかありません。
よし、それなら100年通わせよう…とはならないですよね。方法を見直すべきです。
母語の習得には最適な方法だったとして、それが第二言語の習得にも最適とは限りません。本来ならば理屈で考える年齢になっているのに、言語の習得は赤ちゃんと同じ方法というのがおかしいのでしょう。論理的な思考に頼らずに赤ちゃんスタイルでゴリ押ししてしまうことで、そこに工夫の余地がなくなってしまうというのも問題がありそうです。
力技で無理矢理習得した母語を活かして、今度は理屈で考える部分を重視しましょう。文法を学ぶことこそが、第二言語を学ぶ際の重要事項です。1+1がいつも2であるように、文法もいつも同じです。理屈で考えればいいだけなんです。
当教室では文法の学習に力を入れつつ、ネイティブの発音にも親しめるような教材を使用しています。
理論的な説明プラス実践的な演習を行えるこの教材のみで、小学校4年生の終わりごろから通い始めた中1の生徒は、これまで3回の定期テストの英語で平均97.3点を取っています。
同じ教材で数学も3回平均99.3点で、3回連続5教科学年1位です(学年平均点と合わせて考えると数学より英語のほうが優秀です)。
もちろん教材だけですべてがどうにかなるわけではなく、この生徒の努力こそがもっとも大事だということは言うまでもありません。
ですが、子どもたちの努力を無駄にしないためにも学び方には細心の注意を払う必要があります。
「歌とダンスとハロウィンパーティー」はそろそろやめにして、しっかり英語の勉強をしてみませんか?