新型コロナが猛威を振るい、子どもたちの学びも大きな打撃を受けた2020年度。
休校の影響で、この年度の定期テストは一学期の期末テストからスタートするという異例の事態の中、当教室の生徒たちは大健闘しました。
休校中も当教室のオンライン指導を毎日利用して、5教科130点台から220点台に上昇して最下層からの脱出を成し遂げたSさん、入塾直後にオンライン授業に切り替わってしまったものの変わらず勉強を続けて、5教科250点台から360点台に大幅アップして初めて平均点以上を取ったHさん(両者とも中学2年生)、そのほかのみんなも本当によくがんばりました。
そんな中でも一段と素晴らしい成績だったのが、このお話の主役、Mさんです。
Mさんが小学校4年生の終わりごろにお母さんに連れられて教室に初めて来たとき、ずいぶんおとなしそうな子だなと感じました。
最近になってなぜ入塾したのか聞いたのですが、勉強が苦手で困っていたわけでもなく、勉強が大好きだからというわけでもなく、何となく塾に通おうと思ったとのことです。
第一印象どおりのおとなしい性格でしたが、ほとんどのことをすぐに吸収する飲み込みの早さと内に秘めた大人顔負けの闘志で、週に3回の通塾で国語算数英語をバランスよく進め、小学5年生の終わりごろには中2レベルの英語をほとんど身につけてしまいました。そのため6年生の6月には英検に挑戦しようということに。
本人もお母さんも、当初5級からの受験を望んでいたのですが、「現段階の実力なら、5級に受かるよりも4級に落ちたほうが良い経験になります」という塾長のわがままを聞いてもらうことにしました。4級に落ちたほうが…とは言いましたが、落ちるとは微塵も考えていません。結果は当然合格で、1年後に3級を受験しようと決めて勉強を続けていました。
6年生の夏ごろからは、中3レベルの英語に加えて中学校の数学を先取りすることも始めました。
どこかで音を上げるのではないか、ちょっと厳しいことをさせすぎていないか、心のどこかで心配している塾長をよそに、常に凛とした雰囲気で集中してくれています。
来年(2020年)には英検3級を、さらに中学校の最初のテストで英数国の3教科合計300点を目指そう、という壮大な目標を提案したときに、「さすがにそれはちょっと…」という反応ではあったものの、まんざらでもないような笑顔を見せてくれました。
楽しい夢が一緒に見られる、とても素晴らしい生徒だと嬉しく思っていました。
ところが…。
中学校に入学したとき、世界は1年前とは全く違うものになっていました。
新型コロナウイルスの影響で学校は休校になり、塾もオンライン授業をメインに行わなくてはならず、英検もこの状態で受けさせようとはとても思えません。
前述のとおり、学校の定期テストは1学期の期末テストからということになりました。
慣れない状況で生徒の達成度も把握しにくく、本当にこれでいいのか、何かほかにやらせるべきことがあるんじゃないかと迷い続ける日々でした。
その不安を吹き飛ばしてくれたのは、教室の子どもたちでした。
結果として、ほとんどの生徒が素晴らしい成績を叩き出し、このつらく苦しい日々に光を灯してくれました。
みんな素晴らしかったのですが、MVPを一人選ぶとしたらMさんです。
5教科482点で学年1位、8教科756点で学年1位という点数も順位も、その報告を聞いたのが7月17日の金曜日であったことも、その夜の帰り道は小雨が降っていたことも、今でも鮮明に覚えています。
英検3級は2回見送った形でしたが、2021年1月の一次試験は優秀な成績で突破し、二次試験は満点で突破できました。
3月の北辰テストでは5教科偏差値70を超え、快進撃はまだまだ止まらなそうです。
ますます頼もしく成長していく姿から、いつも何か教えてもらっている気分です。
これからも一緒にどんな夢を見せてもらえるのか、本当に楽しみです。
(2021年4月 加筆終了)